多趣味な男のブログ

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プラトンから知る「聖剣使いの禁呪詠唱」

綴る!

 タイトルの通り、今回は「聖剣使いの禁呪詠唱」(以下、ワルブレ)をプラトン哲学の観点から見ていこうと思います。プラトンについての知識は無くても理解できるように書いていくつもりですが、ワルブレについては知っておいた方が良いと思うので簡単な紹介をします。

※僕はワルブレ、プラトンどちらの専門家でも何でも無いのでその点をご了承ください

聖剣使いの禁呪詠唱とは

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 「聖剣使いの禁呪詠唱(ワールドブレイク)」は、あわむら赤光(あかみつ)著のライトノベル作品です。GA文庫より全22巻が刊行されており、完結済みの作品です。

 2015年にはTVアニメ化され、それを見てワルブレを知ったという方も多いのではないでしょうか? 僕もその一人です。

 放送当時、かなり話題になりました。たぶん良い意味で。

 どんな話かというと、「前世の記憶を持った人間が集まる学園を舞台とした学園モノで、正体不明の怪物との戦いを描く学園バトルアクション」です。

 僕も当時リアルタイムでアニメを見ていた程度の知識しか持ち合わせていないのですが、それでも強く記憶に残っている作品の一つです。

 そして今回は、ワルブレの代名詞とも言える作中の台詞「思い……出した!」を中心にプラトン哲学と絡めて見ていこうと思います。

 

プラトンイデア論

 今回見ていくプラトン哲学の一部を簡単に説明します。

 プラトン現実世界に存在する物事はすべてイデアの模倣であると考える。プラトンが言う「イデア」とは、抽象的かつ非物質的なモノである。

 これだけでは何が言いたいのかわかりにくいと思います。なので、三角形のイデアを例にして考えてみましょう。

 

「三角形を描いてください」

 あなたはそう指示されました。あなたはペンを持ち、紙に三角形を描きます。そしてそれを見せると、同じように相手も紙に描いた三角形を見せてきました。

 さて、あなたの三角形と相手の三角形、どちらも”三角形”であることに違いはありません。ですが、それは全く”同じ”三角形でしょうか?

 いいえ、全く同じということは無いはずです。一見同じに見えたとしても、各辺の長さ、角の大きさ、すべてが同じということはありません。必ず違いがあるはずです。

 こうしたことはなぜ起こりうるのか? それはあなたと相手、両者とも三角形とはこういうモノだという抽象的かつ非物質的な「三角形のイデア」を”知っている”が、紙に書いた三角形はイデアの模倣であるから違いが生まれたのです。つまり、現実世界にイデアは存在しえないのです。

 三角形のイデアを現実世界に表すことはできない。だがしかし、我々は三角形のイデアを”知っています”。それはなぜなのか?

 

知識の想起論

 プラトンは人間の魂(プシュケー)は、人間の肉体に宿る前から世界に存在していると考えた。そして世界に肉体に宿る前の非物質的存在の魂はイデアを知りうる。だが、そうしてイデアを知った魂は肉体に宿ることで、視覚、聴覚などの感覚的知覚に惑わされ制限され、イデアを忘却してしまう。

 そうして無知のヴェールに包まれた我々は、現実世界に存在するイデアの模倣物に触れる――我々がいう勉強――ことで、イデアを想起する。つまり。思い出すのである。

 これがプラトンの言う「知識の想起論」である。

 この考えによれば、我々の肉体に宿る魂が知っていた三角形のイデアを、学校などで三角形のイデアの模倣物に触れる事で思い出したのです。

 

ワルブレにおけるイデア

 皆さんすでにお気づきであろうが、ワルブレは根底にイデア論が敷かれているのだ!!

 ワルブレはエンタメ作品。長々とイデアやらなんやらと堅苦しい話をしても読者は退屈してしまう。そこを理解しているあわむら赤光先生は、イデアを前世の記憶に置き換えることで作品内にプラトン哲学を落とし込み、娯楽作品として成功させたのです。

思い……出した!

  こうした背景を知れば、この台詞も機知に富んだものだと言えるだろう。

 

思い……出せない!

  そしてこちらの思い出せないバージョン。これは模倣物との接触の不足、あるいは魂がイデア、前世の記憶を知らないことを表している。

 

 もちろんこれ以外にも、ワルブレの根底はイデア論であるという根拠は存在する。

 ワルブレのエンディングテーマのタイトル「マグナ・イデア

 イデアという言葉が組み込まれている。つまりはそういうことである。

 

おわりに

 この記事を読んだあなたは思い出したはずです「ワルブレは哲学的要素が組み込まれているのに、それを読者に気づかせない至高のエンタメ作品である」と言うことが。

 今回はアニメから分かる情報だけで見ていきましたが、原作にはもっと多くイデア論をほのめかすモノが存在しているのかもしれませんね。

 

 まだ思い出してない人は是非思い出してください。

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